土地の境界線をめぐるトラブル | 京都の弁護士による不動産トラブル相談

大木祐二法律事務所

土地の境界線をめぐるトラブル

境界に関する二つの概念

 境界とは隣接する土地の境目のことです。境界線に関する考え方には「筆界」と「所有権界」の二種類があります。

筆界と所有権界

「筆界」とは、登記された一筆の土地の外線のことで(不動産登記法123条1号)、法律で定められた境界線であることから「公法上の境界」とも呼ばれています。あくまでも登記簿を基準とするため、隣接する私人間の合意で変更することはできません。
「所有権界」とは、民法上の所有権が及ぶ範囲を画する外線です。対象が個人の所有権であるため、私人間の合意で変更することが可能です。
 本来であれば筆界と所有権界は一致するのですが、隣人同士の取決めや相続による分割、時効取得など、さまざまな事情が原因で両者にズレが生じる場合があります。このズレが土地の境界線をめぐるトラブルへとつながるのです。

異なるアプローチ

 問題をより厄介にしているのが「筆界」および「所有権界」それぞれ解決のアプローチが異なる点です。
 境界線をめぐる対応策としてまず思い浮かぶのは「境界確定訴訟」だと思いますが、これは公法上の境界(筆界)についての訴訟です。越境して土地を使用している隣人に対して退去・収去を求める場合には、境界確定訴訟ではなく所有権確認訴訟を提起します。問題の内容によっては、時間や労力をかけて公法上の境界を確認する意味がない場合もあるのです。
 お困りのトラブルに対してどのようなアプローチが適切か、まず弁護士などの専門家に見立ててもらうことをお勧めします。

境界線をめぐるトラブルの対処法

 境界線をめぐっては、境界標や越境物に関するトラブル、現実の所有権と公法上の境界が異なる場合のトラブルがあります。それぞれについて解説します。

境界標に関するトラブル

 境界標とは、土地同士の境を表す目印です。境界の折れ目に設置されることが多く、境界標を直線で結べば形状に沿って土地を囲むことができます。土地の境界を示す重要な目印であり、境界標の設置は法律に従って有資格者である土地家屋調査士が行います。
 よって、個人が勝手に移動させたり撤去したりすることはできません。

⑴ 刑事上の責任

 境界標を勝手に損壊、移動、除去した場合は、境界損壊罪が成立し、懲役5年以下または罰金50万円以下の刑に処せられます(刑法262条の2)。

⑵ 境界標の復元

 境界付近で工事などを行うためやむを得ず境界標を除去することがあります。
 境界標の亡失の恐れに気づいた場合には速やかに隣地所有者や工事の発注者に注意を申し入れ、除去がやむを得ない場合には、隣接者と復元に向けた協議を行います。
 復元準備としては、全利害関係人立会いのもと現地調査を行い、境界標の周囲の状況や位置関係を調査、記録します。数値資料がない場合には隣接者との話合いも重要な資料となります。かならず現地立会いの上、協議を行いましょう。これら資料に基づいて境界標の再設置を行い、合意した内容を記載した境界確認書および図面を作成し相互に保有します。

越境物に関するトラブル

 境界線上に建物や塀などの建造物がある、エアコンの室外機や排水管などの設備がある、隣地の木の枝や根が敷地内に伸びてきている、上下水道管やガス管などの埋設があるなどが例で、境界線を越えて隣人の物が侵入している状態です。

⑴ 民法233条

 例をみればわかるように、隣接する土地の間でトラブルになりがちな越境物ですが実際に法律で規定しているのは、竹木の枝の切除及び根の切取りに関する民法233条だけです。
 ちなみに民法233条では、境界を越えて伸びてきた木の「枝」は、隣家に切るように請求でき、木の「根」が境界を越えるときは侵入された側でその根を切り取ることができます。
 しかし、隣人同士、好戦的な態度はできるだけ避けるべきで、枝や根の侵入による明確な被害を示した上で、まずは温和に話を進めることから始めましょう。
 樹木以外の越境物については、多くの場合、次の⑵⑶による対応をとることになります。

⑵  越境して建築が行われそうな場合
まずは工事の中止を

 建築途中である場合は、裁判所に対して、まずは工事を中止させるために建築禁止の仮処分命令の申立てを行い、その後に基礎部分の収去請求、必要であれば境界確定などの訴訟提起をします。
 工事を止めることを優先するのは、工事が進むにつれて建物収去が困難になるからです。所有権侵害を理由として出来上がった建物の取壊しを求めることも法理論上は可能ですが、実際には侵害の程度と取壊しに伴う経済的損失などを総合考慮した結果、権利濫用にあたるとして取壊しが認められないこともあるのです。
 さらに放置すれば時効取得の可能性もあります。弁護士に相談するなど、できるだけ早く手をうちましょう。

刑事上の責任

 他人の土地と分かって勝手に家を建築した場合は不動産侵奪罪が成立し、懲役10年以下の刑に処せられます(刑法235条の2 )。

⑶ 長年放置されてきた越境物についての対処法

 多くの場合、それまでとくにトラブルにはなっていなかったが土地の売却や建物建築時に越境物にはじめて気付いたという経緯をたどります。今までトラブルになっていなかったという経過を踏まえて、好戦的な態度は控え冷静に対処することが重要です。
 まず、境界確定行為と同様、現況を調査・測量して双方合意の上で境界標を設置するなどして境界を公正に復元します。そして境界については「境界確認書」を、越境物については「協定書(覚書)」を作成し相互に保有します。
 協定書には「越境物については建直し時に収去する」あるいは「新所有者に承継する」といった取決めを記載します。越境物に関する取決めは原則として当事者間のみで有効ですが、不動産取引の慣習として売買契約時の条件として重視されます。その結果、新しい所有者にも合意の内容が承継されることになります。このような対処を講じることで、以降のトラブル発生を未然に防ぐことができるのです。

現実の所有権と公法上の境界が異なる場合

 冒頭で「筆界」と「所有権界」とは区別されると説明しました。隣接所有者同士で境界確認書を取り交わしていたとしても、公法上の筆界は変更されません。もし登記簿上に所有権の実態を反映させずにいると、相続や売買などの新所有者が思惑通りの権利を取得できないことになり、後々のトラブルに原因になります。
 まずは、境界確定を行なった上で、自己所有の土地または相手方の土地、あるいは両方を合分筆して、所有権界の位置(現実の所有権が及ぶ範囲)を相互に確認します。そして、合分筆された土地につき所有権移転登記を行ない、所有権界の位置と登記簿上の土地の境界位置が合致するようにします。この段階で境界確認書を作成して、将来に備えて復元可能な書類を残すようにしましょう。              

境界をめぐる紛争解決方法

 隣接する土地の所有者と境界についての話合いが難航した場合には、境界確定訴訟を裁判所に提起することができます。
 しかし、境界確定訴訟にかかる時間的・経済的コストは大きく、そもそも行政が規律すべき公法上の境界を裁判官が判断するという点で大きな限界があります。 
 裁判以外の方法としては、法務局または筆界特定登記官が行う筆界特定制度があります。手続には土地家屋調査士や弁護士などの筆界調査委員が参加し、その意見や調査を踏まえて筆界特定を行うものです。
 それ以外にも、民事調停やADR(裁判外紛争解決手続き)があります。
 いずれの手続きも長短所があります。問題解決にどの方法が最適か、実績豊富な弁護士がお話を詳しく伺った上でアドバイスさせていただきます。

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