当該土地が必要となったので、借地人に退去してほしい | 京都の弁護士による不動産トラブル相談

大木祐二法律事務所

当該土地が必要となったので、借地人に退去してほしい

前提

 借地人に退去してほしい場合、借地契約を終了させることになりますが、期間満了による終了と期間内解約・期間の定めのない契約における解約とでは退去までの流れが大きく異なりますので分けて説明します。

期間満了による終了

借地権の種類

 借地権とは、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権のことです(借地借家法2条1号)。そして、借地権には普通借地権、定期借地権、自己借地権、一時使用目的の借地権があります。自己借地権については本稿とは関係がないので省略します。
 普通借地権は、期間満了後に更新拒絶をするにあたり「正当の事由」の存在が必要です(借地借家法6条)。普通借地権の定義は借地借家法に規定がなく、借地借家法の第4節の定期借地権等以外の借地権のことであるとされます。
 これに対して、定期借地権は、一定期間の満了により消滅する借地権で、借地契約の終了にあたり正当事由の存在は必要ではありません。
 一時使用目的の借地権は、その名の通り臨時設備の設置など一時使用のために設定される借地権であり、更新拒絶に「正当の事由」の存在が必要ではない点で定期借地権と共通していますが、定期借地権に関する借地借家法22条から24条が適用されません。

借地権の種類ごとの存続期間

⑴ 普通借地権の存続期間

 普通借地権の存続期間は30年です(同3条本文)。ただし、借地契約で30年より長い期間を定めることも可能です(同条ただし書)。借地契約で30年未満の存続期間を定めたとしても、それは借地権者に不利なものとして期間の定めは無効となり(同9条)、期間の定めが無効となる結果、期間の定めがないことになるので借地借家法3条により存続期間は30年になります。

⑵ 定期借地権の存続期間

 定期借地権には、一般定期借地権(同22条)、事業用定期借地権(同23条)、建物譲渡特約付借地権(同24条)の3種類あり、存続期間はそれぞれ50年以上、10年以上50年未満、30年以上となっています。

⑶ 一時使用目的の借地権

 一時使用目的の借地権の存続期間は契約により当事者が自由に決めることができます。ただし、存続期間に関する借地借家法3条や22条、23条、24条の規定の適用がないので、賃借権を内容とする借地権の存続期間は20年以下となります(改正前民法604条1項)。改正民法では50年以下となります(改正民法604条1項)。

存続期間の満了

 定期借地権と一時使用目的の借地権は、存続期間の満了により終了し、契約の終了に当たり「正当の事由」は必要ではありません。
 これに対し、普通借地権の終了には、存続期間の満了だけでなく、借地権者からの更新請求又は賃借人による使用継続に対して賃貸人(地主)から遅滞なく異議を述べ(借地借家法5条1項ただし書)、その異議に「正当の事由」が必要となります(同6条)。

⑴ 「正当の事由」の判断方法

 前述の通り、普通借地権を終了させるには賃貸人側に「正当の事由」が必要とされます。「正当の事由」の有無を判断するにあたっての考慮要素が借地借家法6条に列挙されています。同条には「その他の一切の事情」といった文言がないので、同条の考慮要素は例示列挙ではなく、制限列挙だとされています。
 具体的には、①借地権設定者と借地権者のそれぞれが土地の使用を必要とする事情、②借地に関する従前の経過、③土地の利用状況、④借地権設定者が土地に明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出が考慮要素となっています。 

⑵ 各考慮要素間の関係

 上記の考慮要素は基本的要素と補完的要素に分かれ、基本的要素が①、補完的要素が②ないし④とされます。基本的要素だけでは結論を導き出せない場合に補完的要素を考慮することになります。④はいわゆる立退料にあたりますが、立退料はあくまで補完的要素であり、立退料を借地権者に支払ったとしても①の基本的要素が満たされなければ「正当の事由」は認められません。

借地契約の終了

 借地権者からの更新請求や使用継続がないか、又はそれらがあってもそれに対して遅滞なく異議を述べ、その異議に「正当の事由」が認められた場合、借地契約が終了し、建物収去土地明渡請求をすることになります。これに対して借地権者が任意に履行すれば賃貸人が何かをする必要はありませんが、借地権者が履行しない場合には、建物収去土地明渡請求訴訟をすることになります。ここで、借地権者が建物買取請求(借地借家法13条1項)をすることができる場合があることに注意しなければなりません。
 これに対して、借地契約が終了しない場合にも借地権者との合意解約という方法があり、合意解約のための交渉をすることができます。合意解約の場合、建物の買取りについて合意しない限り、借地権者の建物買取請求権は放棄されたと理解されます(最判昭和29年6月11日)。

期間内解約・期間の定めのない契約における解約

借地権の種類による相違

 上記「第2 期間満了による終了」で述べたのと同様に、借地権の種類によって解約の可否が異なります。すなわち、普通借地権と定期借地権の場合、賃貸人側が期間内解約をすることはできません。賃貸人側から期間内解約できる旨の条項があったとしても、借地借家法9条により無効とされます。
 これに対して、一時使用目的の借地権や建物所有目的ではない借地権は借地借家法の借地契約に関する規定の適用がないので、期間内解約も一定の場合には可能です。

一時使用目的の借地権の期間内解約

 一時使用目的の借地権の場合、3条、22条ないし24条の適用がない結果、期間の定めのない契約となることがありえます。ただし、実際上、期間の定めのない一時使用目的の借地権というものは考え難いと思われます。期間の定めがある場合、期間内解約条項がなければ期間内解約はできないとされます(民法618条反対解釈)。期間の定めがない場合には、解約申入れから1年を経過することで借地契約は終了します(民法617条1項1号)。

借地契約の終了

 借地契約が終了しない場合には合意解約が考えられるのは前述の通りです。そして、借地契約が終了する場合も基本的には上記「第2の4項 借地契約の終了」と同様ですが、一時使用目的の借地権の場合、建物買取請求権は認められません(借地借家法25条による13条の適用排除)。

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