その他のトラブル
大地震や台風による甚大な被害によって耐震化への意識が高まり、また、高齢化が進んだことによるバリアフリー化のニーズも増大したことで、リフォーム需要が増加しています。
それに伴いリフォームに関するトラブルも増加しています。『住宅相談統計年報2020』によりますと、2019年度に実施した電話相談のうちリフォームに関する相談は前年度比1.7% 増加の11,948件で、この数は10年前(2010年)の2倍以上にもなります。
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トラブルの背景には、リフォーム工事は新築住宅に比べると規制が緩やかであることや、消費者の好みや要望を反映させることが多いこと、それにもかかわらず合意書面が交わされず口約束で済ませてしまったなどの契約のあいまいさが原因としてあげられます。
このコラムでは、リフォームトラブルの具体例とその対処法、そしてトラブルにあったときの相談先についても解説していきます。
リフォームに伴うトラブルは、①契約締結時、②工事中、③工事完了後に3段階に分けられます。それぞれの段階におけるトラブルの概要とその対処法について解説します。
「突然の訪問で地震がきたら倒壊する危険があると指摘され、床下や屋根裏に不必要な補強工事をさせられた」、「雨漏りのおそれがあるといって瓦の葺き替えを勧められてその場で契約したら相場よりも高額だった」といったケースです。
民法に従って契約の錯誤無効や詐欺取消などの主張ができますが、より効果的な救済手段がクーリング・オフの制度です。
訪問販売によって締結した契約には『特定商取引に関する法律』が適用されます。法定事項を記した契約書面(法定書面)の交付後8日以内であれば、理由なく、一方的に解除することが可能です。また、業者から交付される法定書面(契約書など)には役務の種類や対価など必ず記載しなければならない事項があり、これらを欠く場合には、いつでもクーリング・オフができます。
「期日が過ぎても工事が開始されない」、「内装リフォーム工事が開始され壁を剥がしたところ、予想外に柱が腐っていた」、「指定したものと異なる資材を使用している」、「上部階を増築するのに下部階の構造補強工事をせず明らかに手を抜いている」といったケースです。
この段階でのポイントは、契約内容の明確性と特定性です。リフォームの具体的な内容や工程、期限、費用及びその支払方法、さらに契約時に予測できない変更が発生した場合の対応方法についてもあらかじめ文書により定めておくことが大切です。
リフォームは工事請負契約を締結して行われるのが通常ですが、その際に取り交わす書類が両当事者の義務を判断するのに重要な資料となります。重要書類には、契約書はもちろん、見積書、工事請負契約約款、仕上げ表などがあり、正確に理解するには専門的知識が必要なものもあります。少しでも疑問に思ったことは放置せずに相手業者に説明を求め、必要があれば外部専門家に相談することをお勧めします。
また、工事中はどうしても口頭のやりとりだけで済ませがちですが、「言った、言わない」はトラブルのもとです。業者との話合いは記録に残し、工事の前・中・後の写真を撮っておくことも有効です。
工事途中であっても、耐震壁などの構造材を無配慮に取り除いたり、図面通りの施工になっていなかったりなど明らかな手抜き工事が認められる場合には、必要に応じて工事を中止させて問題点を明らかにしなければなりません。うやむやのまま工事が進んでいくと欠陥内容が外部からはわかりづらくなり、欠陥部分の調査や補修に余分な費用、時間がかかってしまう可能性があります
なおも業者が強引に工事を進めようとする場合は、裁判所に建築工事続行禁止の仮処分を申し立てるという方法もあります。
工事中であっても注文者は自由に請負契約の解除ができます。ただし、既履行部分のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分は完成したとみなした上で、請負人は注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができます(民法634条)。
「工事が完了してから徐々に工事箇所が歪んできている」、「屋根葺き替え工事後雨漏りが発生したため担当者にメンテナンスを頼んだがなかなか施工してくれない」、「瑕疵かどうかを見てもらいたくて連絡したのに反応がない」といったケースです。
工事完成後に発覚した不具合については、注文者は請負人に対して契約不適合責任を追及できます。契約不適合責任とは「目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき」に請負人が負うべき責任です(民法559条、562条1項本文以降準用)。わかりやすく言うと、契約内容とは違ったものを提供した場合に請負人に発生する責任です。
注文者は、具体的に以下の請求をすることができます。
これらの請求は、注文者が不適合であることを知ったときから1年以内に請負人に「通知」することが前提となります。ここにいう通知とは、単に契約との不適合があることを抽象的に伝えるだけでは足りず、詳細におよぶ必要はないものの、不適合の内容を把握できる程度にその種類や範囲を伝える必要があります。
なお、契約不適合責任にいての民法の規定は当事者の特約で免責を認めたり、期間を短縮したりすることが可能です。このように請負契約では、適合が求められる仕事の内容や最終的な責任の範囲に至るまで、初期段階における契約内容の確定がいかに重要であるかがご理解いただけると思います。
リフォームトラブルに巻き込まれた場合、どこに相談すればよいのでしょうか?
消費者庁管轄の独立行政法人である「国民生活センター」では、全国に設置された消費生活センターを窓口として、リフォームに関する商品やサービスについて苦情・問い合せ対応を行っています。
また、国土交通省管轄の公益法人である「住宅リフォーム紛争処理支援センター」では、「住まいるダイヤル」という電話相談や、建築士や弁護士による専門相談も実施しています。
それ以外にも市役所などによる無料相談の利用も可能です。
弁護士といえば裁判になってはじめて相談するイメージがありますが、トラブルを回避し、また発生してしまった損害を最小限に抑えるには、できるだけ早期の段階で相談することをお勧めします。
特に請負契約は、その都度一回限りの売買と異なって、合意してから工事が完成するまで相当時間を要します。途中予想外の事態の発生もめずらしくなく、交渉を含めた臨機応変な対応が求められるのです。そして、この契約は、当初の契約書の内容が後々に大きく影響する場合が多いので、契約書作成段階から弁護士が携わることができるのであればトラブルを効果的に防止することができます。
クーリング・オフによる解除の通知をしたい、契約書の内容で気になることがあるなど、些細なお悩みでもご相談ください。契約締結段階から訴訟に至るまで徹底的に弁護士がサポートします。