不動産売買
不動産売買における売主買主双方の合意や取決めの内容を記載した契約書です。
法律上、契約書は売買契約の成立要件ではありません。契約書がなくても、売主買主双方の合意があれば売買契約が成立します。
しかし、契約内容を書面に明記することで両当事者が自分の意思と相違ないか慎重に判断することができ、その後のトラブルを防止する効果も期待できます。特に財産的価値の高い不動産が客体となる不動産売買では、契約書のない取引は実務上まずありません。事前に不動産売買契約書を作成しておき、契約書への署名捺印によって契約が成立するという扱いが一般的です。
不動産売買契約書にはおおむね以下の事項を記載します。
不動産業者を仲介して売買契約を締結する場合には、売買契約書の作成は不動産業者が行うことが一般的です。売主と買主それぞれに仲介業者がある場合には、いずれかの不動産業者が契約書を作成して、他方がこれを確認します。
不動産業者を仲介させずに当事者同士で不動産の売買を行う場合は、どちらか一方が契約書を作成します。法律上どちらが作成するという決まりはなく、双方が話し合って作成者を決め、他方がこれを確認することになります。
売買契約書ですので、通常であれば売買契約締結時にまで作成すれば足りるはずです。
しかし、契約当日に契約書を手渡され読み上げられたところで、細かな法律や将来生じるおそれのあるトラブルについて正確に理解するのは非常に難しいです。作成者だけではなく契約書を受け取った側も十分に理解し納得することが、後日の紛争回避に繋がります。
したがって、遅くとも契約締結日の数日前には契約書を作成し、他方にも確認のために渡します。受け取った側は契約書をじっくり読んで誤解や不明な点を明らかにし、契約当日までには解消しておかなければなりません。
では、受け取った不動産売買契約書について、契約当日までにどんな点に注意して確認すべきでしょうか。記載事項ごとに解説していきます。
登記記録に従って正確に物件の表示がされているかを確認します。
目的不動産に何が含まれ、何を撤去すべきか確認します。含まれるものについては不具合がないかも確認します。土地であれば庭木や庭石など、建物であれば給湯器やエアコンなどの設備、照明などの備品についてです。
売主による所有権移転登記および引渡しの期日を確認します。
買主による売買代金の支払期日を確認します。
売主による所有権移転登記と買主による売買代金の支払は同時に行うことが一般的です。
土地であれば、登記記録上の面積を基準に価格を決める方法と、実測した面積によって確定させる方法とがあります。後者の方法には、さらに、契約日前に実測して価格を確定させる方法と、ひとまず登記記録面積に従って価格を決め、契約日以降に改めて実測する方法があります。もし登記記録面積と異なることが判明した場合には、その精算についての取り決めも記載されているかを確認します。
建物の場合には、登記記録の面積に従って価格を決める方法が一般的です。
いずれにしても金額に誤りがないかを確認する必要があります。
一括払いにするか、分割払いにするか、後者であればどの時点でいくら支払うのかについて、合意と相違ないかを確認します。期日までに支払わない場合の違約金について取り決めがある場合には、その確認も必要です。
手付を交付する場合には、手付金の金額は妥当か、手付金を納める日、解約手付の場合はいつまで解約ができるかについて確認します。
不動産の引渡前に、天災や第三者の行為など売主買主いずれにも責任のない事情によって物件が被害を受けた場合に、その損害を売主と買主どちらが負担するのか(危険負担)を確認します。
買主、売主のいずれかが契約上の義務を果たさない状態、つまり債務不履行に陥った場合に契約を解除する場合の取決めについて確認します。
契約不適合責任とは、目的物が契約当事者の合意した性能を持たない場合に売主が負う責任のことです。売主が負担する追完の具体的な内容や解除まで認めるのか、損害賠償請求や代金減額請求、追完請求をする場合であればその範囲、さらに保証期間は妥当なのかなどについても確認します。
また不動産という特質上、売主の責任は現状のままで引き渡すのみとの合意がある場合には、免責条項の確認が必要です
さらに、不動産に抵当権などが設定されていたり、差押登記、売主以外の第三者が所有権を有していたりする場合には、引渡しまでに売主が抵当権抹消、差押登記抹消、所有権移転登記などの手続を行うという内容の特約を盛り込むことがあります。この特約の内容や実際に履行できなかった場合の対応についても確認が必要です。
固定資産税や都市計画税などの税金、マンション管理費や駐車場料金などの費用について、売主買主のどちらがどのような割合で負担するのか確認します。
買主が住宅ローンを利用する場合に審査が通らなかった場合の取決めを確認します。
本コラムは、一般的な不動産売買契約書について簡単に記述したものです。当然、不動産の特質や当事者の意向によって契約の内容は変化し、契約書の記載内容にも工夫が必要になります。契約書を作成する側である場合はもちろん、受け取る側であっても、内容をしっかり吟味しなければなりません。トラブルになってからではなく、トラブルを未然に防ぐため、法律の専門家である弁護士に契約書のチェックをお任せください。