家賃未払や明渡しを相続人に請求できるか | 京都の弁護士による不動産トラブル相談

大木祐二法律事務所

家賃未払や明渡しを相続人に請求できるか

はじめに

〈ケース〉
 賃借人Aが家賃を滞納したまま死亡しました。生前の5か月分の家賃に加え、賃貸借契約が解除されていなかったので、死後現在までの2か月分の家賃が未払いとなっています。
 また、調べてみると、Aに同居人や配偶者はおらず、3人の子どもB、C、Dがいることが分かりました。

 賃借人が家賃を未払のまま死亡した場合、貸主である大家さんは、相続人に対し、未払賃料や賃借物たる建物の明渡しを請求することができるのでしょうか。また、その請求が可能である場合、具体的に誰に対してどのような請求ができるのでしょうか。

賃借権の相続

 相続が開始されると、被相続人の財産や借金などの債務、一切の地位や権利義務が承継されます(ただし資格や生活保護受給権など、相続されない一部の例外もあります。)。
 財産権である賃借権も当然に相続人に相続されます。したがって、賃借権の効力として、原則として大家さんは相続人に対しても未払賃料や建物の明渡し(賃貸借契約が適法に解除等されており建物明渡しのための要件が満たされていることが前提です。)を請求することができます。
 なお、相続人が相続放棄をしている場合、賃借権も相続されないので、相続人に対しこれらの請求をすることができません。

相続人に対する明渡請求について

 相続人に対して建物明渡請求を行いたい場合、共同相続人全員を探し出し、原則、共同相続人全員を相手方として賃貸借契約を解除等した上で建物明渡しを請求する必要があります。
 たとえ相続人が死亡したからといって、大家さんは勝手に建物内の物を収去・処分してはいけない点に注意が必要です。賃借権が相続人に相続されていて、建物内の財産や物も当然に相続の対象になるからです。もし勝手に処分してしまった場合、損害賠償等の請求を受ける恐れもあります。
 

相続人に対する未払賃料の請求について

 相続人は賃借権を相続するので、その賃借権から派生する借主の賃料支払義務も相続します。したがって、大家さんは、相続人に対し、未払の賃料を請求することができます。その際、相続開始前後で分けて請求する必要があります。

①相続開始前の滞納賃料

 被相続人の生前の未払賃料については、各相続人に対してその法定相続分の限度で未払賃料を請求することができます。この場合、未払賃料全額を各相続人に請求することはできません。この場合の未払賃料は、可分債務として扱われるからです。

②相続開始後の滞納賃料

 一方、相続開始後から賃貸借契約が解除されるまでに発生した滞納賃料については、①とは異なります。被相続人の死亡後の未払賃料については、各相続人に対して、その全額を請求することができます。
「部屋を使用させる」という賃貸人の義務は、分割できるものではありませんので、その対価として支払われる未払賃料も性質上、不可分な債務として扱われます。したがって、各相続人は相続開始後の賃料についてはその全額を支払う義務を負います。

ケースについて

 ケースでは、大家さんは賃借人の死亡前の未払賃料については、子供B、C、Dそれぞれに対して法定相続分を限度(=3分の1)として、請求することができます。死亡後の未払い賃料については、子供B、C、Dそれぞれに対して全額を請求することができます。ただし、子が相続放棄をした場合には、相続放棄をしていない子どものみに対して請求でき、請求金額も異なってきます。子どもが全員相続放棄をした場合、賃借人の両親や兄弟に請求することが考えられます。

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