その他のトラブル
騒音には大きく分けて、日常生活上の騒音と工場及び商業施設からの騒音の2種類があります。
以下、この2種類についてそれぞれの内容と対応を説明していきます。
日常生活上の騒音の例としては、以下のものがあります。
生活騒音について環境基本法が規定しています。環境基本法は、騒音全般と航空機騒音、新幹線鉄道騒音に関する環境基準を定める法律です。
同法16条では、騒音に関する環境上の条件について「人の健康を保護したり、生活環境を保全したりする上で、維持されることが望ましい基準(環境基準)」を政府が定める旨規定しています。
これに基づいて、たとえば京都市環境保全基準で、住居専用地域では昼間は55デシベル以下、夜間は45デシベル以下と定めています。一般に人同士による日常会話は約51~60デシベルとされており、隣室の会話内容が筒抜けという状態であれば環境基準を超える騒音ということになります。
参考:京都市役所
環境基準は「維持されることが望ましい基準」であって、これに違反しても罰則が科されるわけではありませんが、裁判となった場合には重要な要素として考慮されます。
よく聞く騒音規制法は「事業主」を対象とする法律であり、個人が主体となる生活騒音については適用がありません。
生活騒音を規制する条例を制定している自治体は多くなく、京都府も規制していません。
数少ない例である東京都「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」では、住居地域では時間帯に応じて40~50デシベル以下という基準を設けています。
参考:東京メトロ
違反行為者に対して、知事は防止するために必要な措置を取ることを勧告し、従わない場合には停止命令などを出すこともできます。
一般生活を送る上である程度の生活音が生じるのはやむをえず、近隣住民同士ある程度は受忍しなければなりません。しかし、時間帯や音量によっては我慢できないものもあります。そこで、手軽にできる方法として、まず「相談すること」を検討します。
音の感じ方には個人差があり、騒音を出している本人が他人に迷惑がかかっていることを認識していない場合もあります。そこで、まずは騒音元の本人に現状を伝えた上で具体的な対処を願い出ます。穏便に話し合うため、自治会やマンション管理組合にあらかじめ相談をしておくのもよいでしょう。
重要なのは、相手に騒音で被害を受けている旨の苦情を明確に申し出ることです。
騒音裁判では「受忍限度論」という基準が用いられます。社会常識上我慢の限界を超えた騒音のみが,他人の権利を侵害したとして違法と評価されるのです。この基準のもとでは、加害者が被害の事実を知ってから何らかの措置をとることが可能であったのに相当期間放置したという事情が重要な判断資料となります。もし被害事実に気付いていない加害者を相手取って裁判を起こしても、勝ち目はまずありません。最初に相談を持ちかけた日の記録を残すことをお勧めします。
各方面に相談したが事態が改善しない場合には弁護士に相談することをご一考ください。
騒音トラブルは対処法を間違えると、相手から名誉棄損などによる損害賠償を追及される可能性があります。弁護士であれば、第三者的立場から冷静に騒音の差止めを中心とした交渉にあたることができ、また訴訟に発展した場合に備えて必要な証拠の揃え方についても指南が可能です。同時に自治体への働きかけ、警察への被害届けについてもお任せいただけます。
相談や話合いによっても解決できない場合には裁判となります。調停という方法もありますが、合意できることを前提とする手続きであるため、話合いがまとまらない場合には裁判による解決を目指すことになります。
裁判は、騒音による健康被害や防音対策費用を理由とする金銭支払請求である損害賠償請求訴訟と、「〇デシベルを超える騒音を原告らの居室に到達させないこと」という騒音の差止訴訟があります。集めた証拠や加害者の対応、被害者の意向などを踏まえて、どの訴訟類型を選択するかは騒音問題に詳しい弁護士と相談することが必要です。
工場、商業施設からの騒音については、以下のような法律や条例によって規制されています。
騒音規制法は主に事業主を対象とすること、および規制対象が以下の4種類に限られる点で環境基本法とは異なります。
それぞれ「騒音」とされる要件や基準値が異なります。これらの規制基準を守らない場合は直ちに刑罰は科されませんが、都道府県知事が改善勧告や改善命令を出すことができます。そして、この改善命令に従わなかった場合には、懲役刑や罰金刑といった刑罰も予定されています。
また、規制基準を超える騒音かどうかは、裁判における受忍限度論の適用場面で重要な判断要素になります。
環境基本法は事業主または個人を問わず、騒音一般を規制する法律です。したがって、事業場などからの環境基準を超える騒音についても環境基本法が適用されます。
ただし、建設作業の騒音については適用が除外されています(平成24年3月30日環告54)。したがって建設作業の騒音は騒音規制法が適用されるのみです。
騒音規制法3、4条は、詳細な規制内容を条例に委任しており、各自治体は地域の特殊性に応じて条例で基準を定めています。東京都の環境確保条例、京都府の環境を守り育てる条例などがその例です。
事業場などからの騒音についても、まずは、騒音元の事業主と話し合うことから始めます。
特に相手が経済活動を行っている事業者の場合、騒音が基準値を超えていなくても改善措置をとることはめずらしくありません。ただし、合理的な話合いを進めるには、客観的な測定結果や被害の実態を明確に示すことが有効です。民間の調査会社や行政への相談を利用するとよいでしょう。
話し合ったものの改善されない場合には裁判となります。
裁判の場面で注意が必要なのが工事中の対応です。訴訟を提起して判決が出るまで時間がかかりますが、その間に工事が終了してしまっては意味がありません。そこで、工事の差し止め請求と合わせて工事の続行禁止を内容とする仮処分命令を求める必要があります。スピーディーな対応が求められるため、できるだけ早めに弁護士に相談することが重要です。
騒音で悩まされている場合、「止めてほしい」「防音のための工夫をしてほしい」「金銭賠償してほしい」などのさまざまな要求があり、それぞれについてアプローチの仕方も異なります。騒音問題に詳しい弁護士がお客様に寄り添って、ベストな解決へとサポートします。