賃貸借契約書の確認をしてもらいたい | 京都の弁護士による不動産トラブル相談

大木祐二法律事務所

賃貸借契約書の確認をしてもらいたい

不動産賃貸借契約書とは

 不動産賃貸借契約書とは、土地や建物といった不動産の賃貸借契約を締結する際に作成する書面のことです。
 賃貸借契約では、賃貸人賃借人ともに義務を負います。すなわち、賃貸人は土地や建物を賃借人に使用および収益させる義務を負い、賃借人はこれに対して賃料を支払う義務を負います。これらの内容について記載されたものが不動産賃貸借契約書です。

不動産賃貸借契約書の重要性

 不動産賃貸借契約の成立には契約書は要件ではありません。賃貸人賃借人間の口約束でも契約は成立します。
 しかし、契約書は契約の成立や内容を明らかにすることで、トラブルを未然に防ぎ、仮にトラブルが生じた場合には解決の指針にもなります。特に不動産賃貸借契約は、不動産という重要な財産の継続的な使用を内容とすることから、賃貸借契約期間中に双方が守るべきルールを事前に明確にしておく必要があります。
 したがって、不動産賃貸契約では必ず契約書を作成しましょう。

契約書の作成

作成者

 賃貸借契約書の作成者については特に決まりはありません。通常は賃貸人が複数作成し、賃貸人賃借人双方が1通ずつ保有するのが一般的です。

記載事項

 不動産賃貸借契約書には、一般に以下の事項について記載します。

  • ・当事者
  • ・物件の名称、所在地
  • ・契約期間、更新の条件
  • ・使用目的
  • ・賃料や共益費、その支払方法
  • ・賃料の改訂
  • ・敷金
  • ・禁止行為
  • ・修繕
  • ・契約解除
  • ・原状回復義務、損害賠償義務
  • ・上記以外の特約
賃貸住宅については、国土交通省が『賃貸住宅標準契約書』の雛形を作成しています。

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000023.html
参考になされるとよいでしょう。

契約書で確認すべきポイント

 では、記載事項についてはどのような点に注意すべきでしょうか?
 以下、令和2年4月1日の民法改正を踏まえ、特に確認が必要な事項を説明していきます。

当事者

 賃貸借契約の当事者とは賃貸人と賃借人ですが、賃貸人が必ずしも所有者でない場合があります。「所有者は個人で賃貸人は法人」「所有者から賃貸(転貸)の承諾を得ている」というのはめずらしいことではありません。
 賃貸人と所有者とが異なる場合は、賃貸人に賃貸権限があることを明記しておくことが必要です。

物件の名称・所在地

 通常、不動産登記簿に記載されている情報をもとに物件の特定がなされます。所在地や名称は、水道・ガスなどの手続や引越しの手配にも必要になります。間違いがないか確認しましょう。

使用目的

 たとえば「居住用」とだけ記載されているにもかかわらず、賃借人が飲食店、事務所などの店舗として使用してしまうという用法違反をする場合があります。居住用か店舗かを事前に明確にしておくことが必要です。

契約期間や更新の条件

 令和2年の民法改正で、賃貸借契約の期間の上限がこれまでの20年から50年に伸長されました(改正民法604条)。事業用地など長期にわたる賃貸借契約であれば、最長50年までとすることができます。
 これに対して、建物賃貸借契約や建物所有目的の土地賃貸借契約については、借地借家法が適用されるため、改正の影響はありません。建物や駐車場の賃貸借契約の期間は、通常1年や2年とされ、長ければ10年ということもあります。
契約期間が満了すると、当事者の合意によって更新手続が行われる場合と(合意更新)、双方に異議がなければ自動的に更新される場合(法定更新)があります。合意更新であれば、条件として更新を希望する旨賃貸人へ連絡することを必要としたり、料金の支払を必要としたりすることがあります。合意更新と法定更新の具体的な差は、更新後の存続期間で生じます。更新する場合、または更新をしない場合にどのような措置をとるのか確認しておきましょう。

賃料や共益費

 金額だけでなく、支払方法や支払日を明確にしておくことが必要です。支払方法には銀行振込や口座振替、賃貸人への手渡しなどもあります。家賃、共益費を合わせて月1回支払うのが通常ですが、年払いとすることも可能です。
 そして、契約期間が長期に及ぶ可能性がある場合は土地建物価格の変動による賃料の見直しが必要な場合が出てきます。必ず賃料改定についての条項を確認しましょう。

敷金

 賃貸借期間中の賃料や共益費の滞納、原状回復義務などの賃借人の債務を担保することを目的に、敷金が賃借人から賃貸人に交付されることが多くあります。
 令和2年民法改正では、賃貸借契約が終了して目的物が返還された時点で敷金返還債務が生じること、返金額は交付した敷金の額からそれまで生じた賃借人の金銭債務を控除した額であることなど、敷金についてのルールが明確化されました(改正民法622条の2)。ただ、この民法の規定は強行法規ではないため、民法と異なるルールを設けることは可能です。敷引特約についても原則有効であり、信義則に反する事情があれば、消費者契約法10条により無効になる可能性があります。

禁止行為

 賃貸物件の扱いに関する禁止行為にはペットの飼育や同居人の増加、共用部分の利用などがありますが、特に重要なのが転貸や賃借権を譲渡することについてです。 
 転貸などは賃貸人にとっては物件を使用する者が代わることを意味し、物件の性質や現況に重大な変化をもたらすおそれがあります。そこで、転貸などを許さない場合には そのことを明示し、仮に許す場合には、必ず「書面で」承諾するなどの要件を明確にしておく必要があります。

修繕

 目的物を使用するのに必要な修繕は賃貸人の義務ですが、賃借人に責任がある場合まで義務を負う必要はありませんので(改正民法606条第1項ただし書)、その点を確認します。
 また、修繕義務は、逆に言えば修繕するために目的物を使用する賃貸人の権利でもあります。賃貸人による修繕が行われる場合の賃借人の負う受忍義務についても確認しましょう。

契約解除

 賃貸借契約では契約違反があっても直ちに解除できるわけではありません。具体的には、賃貸人と賃借人との間の信頼関係が著しく破壊されたといえる事情が必要となります。
 どのような場合に解除できるのか、具体的事由や催告のタイミングなどをできるだけ詳細に記載されていることが望ましいです。

明渡時の原状回復

 通常使用による目的物の損耗および経年変化の場合は、民法改正によって原状回復義務から除かれるようになりました(改正民法621条)。
 契約書ではこの原則とは異なる特約が記載されていることがあります。内容が合理的か、賃借人が十分理解した上で特約による義務負担を了承しているのか確認しましょう。

連帯保証人

 賃借人の債務を個人が保証する場合、極度額(保証人の負担上限額)の定めをしないと保証契約が無効になります(改正民法465条の2 2項、3項)。
 したがって、極度額の具体的な表示や「賃料〇か月分」というような明確な表示が契約書になされている必要があります。

まとめ

 契約当事者間で力関係に差が生じやすい賃貸借契約は、たとえ契約書に記載されていても、法の趣旨に反する特約は無効となることがあります。契約書の存在だけではなく内容の合理性も重要です。不動産賃貸借契約書のチェックは弁護士にお任せください。

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